もう一つの江南スタイル…公園に不法占拠バラックが密集!ソウル江南区九龍駅前「ダルト村」

富裕層が多く住むとされるソウル特別市江南区。ここに忘れ去られたように存在する巨大不法占拠スラム街「九龍マウル」がある事は以前当サイトでもお伝えした。しかし江南区にはさらに別の場所にも同様のスラム街が点在している。韓国の国民的アーティストらしいPSYがデカイ図体を揺らして歌って踊るド派手なイメージとは真逆の、知られざるもう一つの「江南スタイル」がここにあった…

韓国 ソウル 九龍

ソウル都心部の往十里駅から江南区、城南市、龍仁市などを結ぶ盆唐線に乗って九龍駅で降りて外へ出ると駅の目の前に「ダルト村(달터마을)」と呼ばれるスラム街があると聞いてやってきました。当初は「韓国最大の不法占拠スラム」と言われる九龍村を見る為だったが、距離的に近いので二軒ハシゴしようという魂胆だ。

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それにしても韓国の地下鉄駅構内ってどこもかしこも無駄に広いのね。九龍駅の利用者はそれほど多くはないが、この通り、でかい吹き抜けの空間がある。未だ準戦時下にある韓国では「北」との有事があった時にシェルターとして使えるように、地下鉄や地下街をそういう設計にしているのである。これが日本との違いか…

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九龍駅4番出口または5番出口を出てすぐ目の前にある「ダルト近隣公園」内に入っていく。ちなみに駅周辺は「開浦住公アパート」という広大な団地が広がっていて、小中高一通りの教育施設が取り囲んでいる場所だが、問題のスラム街はこの公園の中にある。

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よろよろと荷物を抱えながら公園入口の階段を登っていくアジョシの後をついていく。恐らくはここの住民かね。しばらくは狭い通路の両側にフェンスがずらりと立てかけられた窮屈なアプローチを通り抜ける羽目になるが、その先には…

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公園の中にある不法占拠スラム

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通路の両側にバラック小屋がぎっしり立ち並ぶ異様な光景となる。これがダルト村である。九龍村には規模では劣るが、それでもかなり壮絶。

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鬱蒼と木々が生い茂る公園の中に不法占拠バラック村が広がっているのでご覧の通りの「木漏れ日に包まれた」家並みが連なる。ある意味ファンタジーな住環境だが、ここに住んでいるのは森の妖精でも何でもない。高齢化した低所得世帯だ。

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このダルト村が誕生したのは1980年代、開浦地区の区画整理が行われた時に追い出された貧民細民一同が当地に集団で不法占拠しバラックを形成、1983年に当地は公園に指定されているが、以来30年余りに渡ってこの状態が放置されている。

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ダルト村には2015年現在で254世帯659人が暮らしている。九龍村同様、ここの住民も殆どが高齢者ばかり。30年以上腰を据えて暮らしている住民にとっては住み慣れた場所を離れるのも嫌だし一般の賃貸住宅に引っ越す金もないという言い分。

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まあそれでも九龍村のオンボロっぷりに比べたらダルト村の「家屋」は割としっかり作りこまれたものが多い。掘っ立て小屋にしてもちゃんと鍵が掛かる玄関ドアも付いているし、ちゃんと各戸ごとに住所も割り振られている。

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しかし所々このようなベニヤ板で囲んだ上に保温性のある雨除けシートを被せただけの明らかに不良住宅めいた建物もあり防災上問題があり過ぎなのは推して知るべしな状況。

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公園内の斜面にてんでんばらばらに築かれた小屋の間を縫う路地、コンクリートで固めているとは言え不安定さは変わらず、絶えず足元に気を使わないと蹴躓いてすっ転びそうになる。

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九龍村の家々はまさにスラムと呼べるべきもので並々ならぬ悲壮感が漂っていたが、ダルト村はまだ見た目にもう少しマシに思える。まず韓国のスラムにありがちな「練炭」は見当たらず、代わりにプロパンガスが使われているあたり、幾分マシな環境である。

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この通り、ガス湯沸し器のついた家もあるくらいだし冬場はそれなりに暖かく過ごせるのだろう。しかもイルボン製、リンナイのガス湯沸し器でした。

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こんなどうしようもない不法占拠スラムだが、ソウル市当局が発行している電子書籍の映画ロケ地ガイド「映画が愛したソウルのロケ地」にダルト村の事が記載されている。映画「心臓が脈打つ」(심장이 뛴다/2011年/キム・ユンジン主演)のワンシーンがここで撮影された、とあるのだ。

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ドラマ・映画大好きな韓国の国民性もあるが、こっちのドラマや映画を幾つか見ているとこのような不法占拠スラムもロケ地としてバンバン使っちゃうあたり、スラムというものに対する観念が日本とは違って見える。日本じゃとても群電前やウトロ地区で映画撮影しないだろ。

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ここまで見てきたのは開浦高等学校に隣接する側の公園内に固まっている一画のみ。「集落」を抜けるとこの通り、今の江南区を象徴するタワーマンションが背後にそびえ立つ対照的な風景も拝める。

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今やこのスラムに生きる活力や若々しさといった上昇気流は全く感じられない。他に行き場のないハルモニ・ハラボジが静かに暮らしているだけである。玄関先には年老いた彼らの生活には欠かせない手押し車が置かれている。

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ダルト近隣公園の南側を走る宣陵路18ギル沿いを歩くと、東側の区画もこの通りグッチャグチャに掘っ立て小屋が立ち並ぶ光景を拝む事ができる。

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スラムの民の心の安寧を支える街のキリスト教会もまたバラック建築物。スラムの教会と言えば川崎の戸手四丁目の河川敷バラックを思い出す訳だが、こういうところは日本も韓国も共通してますね。

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しかしいつまでも行政がこの不法占拠スラムを放置し続けるはずもない。徐々にではあるが行政は住民の立ち退き要請をし続けており2015年中には公園整備の為の工事に着手するとあった。2017年までには本来の「快適な」都市公園として生まれ変わる予定だという。

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そんな訳でダルト村も九龍村同様いつ消えて無くなるか分からない光景である事には違いない。日本以上の極端な首都一極集中をもたらしたソウルの都市化の歪みを象徴するこれらの不法占拠スラムは、いずれは幻のものとなる。

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我々はそうなる前にこの土地に足を運ぶ事ができて幸いだったが、既に開発されて消えてしまい見る事が叶わなかったスラムもあるし、こうしたスラムにしろ置屋街にしろ、韓国社会の闇の部分となるこれらの光景が見られるのは2010年代一杯が勝負どころか。出来る限り何度も韓国に足を運んで見納めておきたい。


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DEEP案内シリーズ管理人。2009年から海外各地を訪問し始め、現在の訪問国は25ヶ国。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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