香港が世界に誇る多国籍安宿オンボロビル「重慶マンション」

かつて世界的有名スラム「九龍城砦」が存在していた、世界屈指の人口過密都市である香港。狭い区画に不法占拠の高層住居が密集していた伝説の魔窟は21世紀を迎える事なくその姿を消した。

九龍城砦亡き現在の香港で、今なお異様な姿を留めているビルと言えば、九龍半島尖沙咀にある「重慶マンション」に他ならない。香港のド都心に位置し、地下鉄の尖沙咀駅からも程近い一等地にある。

重慶マンション(重慶大厦)は尖沙咀地区ネイザンロード沿いに1960年代に相次いで建設されたビルで、正面から見ると一棟しかないが、中は五棟のビルが連結されているので相当な規模になる。安宿が数十軒固まっている他、かなり多国籍な外国人の住処になっているのだ。日本で言うなればさしずめ釜ヶ崎のドヤ街みたいなのがまるごとビルの中に入ったかのような場所か。

我々が訪れた2011年3月時点ではちょうど外壁工事が始まるところで、巨大なビルの壁面に次々竹で足場が組まれていくという珍しい光景が拝めたのだ。ビルの前には大量の竹が積まれている。中華圏では当たり前の光景のようだが、日本人が初めて見るとカルチャーショックが激しい。

日本で見かける建築用の足場とは違い、かなり細い竹が組まれているだけ。この上でてきぱき作業をする鳶職の皆様、大したもんですね。高所恐怖症の身から見るととても真似できませんね。

現在は小汚い外壁が改められ随分変わっているはず。重慶マンションの内部は安宿街となっていて世界中の観光客がお安い寝床を求めてやってくる場所だが、実際はインド人やアフリカ系外国人が独自のコミュニティが形成されていてかなりエスニック感が凄まじい。

かつてはかなり胡散臭い場所で一般人もなかなか近寄り難かったらしいが、ネイザンロードに面した地上階はここ十年以内に様変わりしているようで、商業施設が立ち並び、ショッピングモール「Cke」の入口もある。重慶マンションが舞台となった有名な映画「恋する惑星」の英字題、Chungking Expressから取られている。

今回の香港滞在中、この重慶マンションでは二泊する事になった。夜ともなるとビルの入口付近には多くの人々が集まる。それも肌の黒いインド人や中東系の妙な売人ばかりだ。我々を見かけると「ニセモノトケイ」「ニセモノカバン」とおかしな日本語で声を掛けてくる。やっぱり胡散臭いっすね…

重慶マンションの入口近くには多くの外国人観光客に呼応するかのように沢山の換金所が立ち並んでいる。香港国際空港に深夜に到着して最初の宿泊先がここだ。我々が深夜バスに乗って重慶マンションの前に着いたのは午前2時過ぎ。すぐに何人もの安宿の客引きが近寄って「もうどこも部屋空いてないからウチに泊まれよ」などとかなり強引である。

まあネタになるだろうと思ってインド人の客引きに着いていくと、のっけからムスリム仕様でカレー臭が半端ない宿だったりして、それでHK$450とか言われてしまってボラれるのでとっとと逃げ出してまた適当にエレベーターを乗り継いで適当な部屋を探したりしたが、確かにこの深夜時間帯ともなると「フル」「フル」と言われまくり振られまくりである。

ようやく表に「HAVE ROOM」の札を下げている所があって安堵の溜息が出そうになるが、ノックして開けてもらうやいなや「さっき部屋が埋まったんだよ~悪いね~」と断られる。しかもよく分からない客の白人がしゃしゃり出てきて「日本は津波があって大変だったんだね…気の毒に思うよ」だとか世間話を始めだす。香港に行ったのは、ちょうど東日本大震災の直後だった。えー、こっちは寝たいだけなんですけど…

そうこうしているうちにようやく一つだけ部屋が開いている安宿にありつけた。一室でHK$250だった記憶がある。一人部屋を二人で無理矢理使った。狭いが寝れるだけマシだ。床や壁は全面陶器タイルでトイレか風呂場で寝てる感じだが、年がら年中熱い香港ではこれが普通なようだ。

初めて上京した新社会人が暮らすようなワンルームの部屋よりもさらに狭いといった所で、トイレとシャワーも同じ場所にある。

シャワーは予め壁にある温熱器のスイッチを付けて10分間温めておかないとお湯が出ない。これも香港の安宿では常識。

あと、まともに窓がないのは重慶マンションの安宿では当然の事。糞狭いベッドに上半身スッポンポンで横になり、陶器のタイルに背中を当てて寝る。なんとか眠れそうだ。

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DEEP案内シリーズ管理人。2009年から海外各地を訪問し始め、現在の訪問国は25ヶ国。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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