元祖「フンデルトヴァッサーのゴミ処理場」が見たくて本場ウィーンに行った

ヨーロッパ訪問の最中、芸術の都ウィーンに立ち寄った。それは日本の大阪市にあるあのゴミ処理場を見てからの念願を果たす為であった。あのゴミ処理場を設計したのはウィーンの芸術家「フンデルトヴァッサー」である。おおよそ悪趣味な外観、大阪市民の税金を垂れ流した奇天烈なゴミ処理場だったが、それが今から思えばあれがウィーンを訪れるきっかけだったのである。

かつて2008年開催の大阪五輪誘致運動で大阪市ベイエリアの乱開発が進められた時期、大阪の人工島「舞洲」の一画にド派手で悪趣味過ぎる外観のゴミ処理場が誕生し、大きなネタと笑いを提供してくれた。それが総工費609億円を掛けた「大阪市環境局舞洲工場」、さらに隣接して総工費800億円を掛けた汚泥処理施設「舞洲スラッジセンター」の2つ。

五輪開催を見込んで「世界に誇るべき建物を」と調子づいて、ウィーンの世界的芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーにデザインを依頼、場所柄観光客がUSJと間違えて来てしまう事もよくあるという。五輪招致はIOC委員投票でぶっちぎりの最下位で幻と消え、後に残ったこのゴミ処理場をはじめベイエリアの箱物群は大阪市の財政圧迫の一因ともなり、珍スポット好きな余所者にとっては笑えるネタであっても、税金を払って暮らしている当の大阪市民にとっては笑えない頭痛の種にもなっていた。

しかしフンデルトヴァッサーの出身地であるオーストリアのウィーンにも同様に彼のデザインで作られたゴミ処理場があると聞いていたので、もし長い人生のうちウィーンを訪れる事があった際には見ておかなければ…と思っていた。折りしもヨーロッパ鉄道旅行を敢行した2012年秋にウィーンに行く事ができた。これはよもや運命だったのか。

場所はウィーン市街地北部にあるシュピッテラウ(Spittelau)だ。Uバーンの4号線か6号線に乗れば中心市街地から電車一本で来る事が出来る。雰囲気的には都心から郊外に出る境目くらいのターミナル駅ってとこで、さしずめ新木場みたいな感じでしょうか。大学キャンパスが駅近くにあって学生さんが多いです。

駅前に降り立つともう目の前がゴミ処理場の建物。舞洲のような鉄道も通わぬ地の果てとは違ってこちらは見学しやすい交通便の良さが特徴的。正式名称をシュピッテラウ焼却場(Fernheizwerk Spittelau)といい、大阪の舞洲工場が出来る一昔前、1992年に完成している。

大阪市環境局舞洲工場と同じく、巨大な煙突にはでかいキ○タマがお団子のようにぶっ刺さっている。てっぺんとその下に2つ。大阪の埋立地で見ると道頓堀あたりのコテコテなノリの延長線上にあるただの悪趣味建築にしか思えないが、さすが本場ウィーンで見ると芸術作品に思えてしまう。

隣接するゴミ処理場のオフィス棟もどこかおどろおどろしげなデザインで威圧感を与えている。芸術の都という事で派手な外観も許される訳で面白い街ですね。「Fernwärme Wien」とドイツ語の名称が書かれているのが見えるが、直訳すると「ウィーン地域暖房」になる。ゴミ処理場と火力発電所を兼ねており、予熱を周辺の建物に供給して暖房に活かしているそうだ。実によく考えられている。

で、この建物にも屋上にキ○タマが乗っています。舞洲工場の玉はテレビ報道で1個100万円と聞いたが、ここの奴は1個何ユーロ掛かったんでしょうね。それにしてもまだ10月だというのに寒い。雨降ってるし…ヨーロッパは緯度も高いし秋の訪れがかなり早いです。そりゃ地域暖房システムだって作るわさ。

シュピッテラウ駅から大学へ向かう道すがらゴミ処理場の横を通り抜ける事になるので学生を中心に人通りが非常に多い。駅前がゴミ処理場というのもあんまり日本的センスからすると考えられん展開ですが。

壁の模様などもフンデルトヴァッサーらしさが全面に出ていて、舞洲工場を知っていれば思わずデジャヴに陥る事請け合い。まあでも想像していたような派手派手しさは無いかも。年数経ってて建物もなんだかくすんでるし、元から造りもそれほどゴージャスではない。

シュピッテラウ駅からゴミ処理場の周辺にペデストリアンデッキが設けられているので、建物の周囲をじっくり眺める事が出来る。一応工場見学できるかダメモトで問い合わせたけど、やっぱり断られてしまった。舞洲工場の場合は中まで手抜かりなく物凄いからな。

オフィス棟の裏手にも、舞洲工場で見たような不定形状の柱がいくつも並んでいて、まさしく兄弟船である事を物語っている。柱のサイズも舞洲に比べたら小振りだし、スケールが小さいかもな。それだけ舞洲工場が巨大で派手過ぎてヤバイという結論に至った。でも本場ウィーンで兄貴分を見られたのは良かった。

んで、せっかくウィーンまで足を運んだのだから、フンデルトヴァッサーゆかりの施設をあれこれ見て回る事にした。まずは「クンストハウス・ウィーン」を目指すべきである。ここはフンデルトヴァッサーの人生とその作品群を知る事が出来る美術館。ウィーン市街地東部にあり、最寄りは路面電車の「Radetzkyplatz」駅が近い。

併設されたレストランもまたフンデルトヴァッサーデザインで不規則な白黒市松模様が特徴的。美術館の展示フロアは撮影禁止となっていたので写真が無いのだが、フンデルトヴァッサー自身は過去に日本に滞在して日本人女性と結婚していた時期もあり、随分な知日家だったりする。舞洲工場などの繋がりもその辺にあるんでしょうかね。自らの名前を漢字に訳した「百水」の雅号を持っている。

クンストハウスの近くにある市営住宅「フンデルトヴァッサーハウス」がこちらになります。当然中には人も住んでいるしマジな市営住宅である。大阪五輪の誘致が万が一成功していたら、大阪名物貧民団地もこんな奇抜なデザインのものがいくつも誕生していたかも知れないと思うと背筋が寒い。これはウィーンにあるからこそ魅力があるものなんだろう。

その近くにある土産物屋もやはりフンデルトヴァッサーデザイン。世界中からファンが押し寄せる聖地のようで、フンデルトヴァッサーにまつわる土産物があれこれ置かれている。ここに居る人達、大阪の舞洲工場の事も知っているのだろうか。あの建物はフンデルトヴァッサーの死後、2001年に完成しており、実質的には「遺作」という事になっている。

あとこの土産物店の中にはフンデルトヴァッサーデザインのトイレもある。ちょうど尿意を催してきた事だし行っときますかね。ウィーンはどうも寒くてトイレが近い。さっきからずっとニョウデルトヴァッサーな感じがする。

「Toilet of Modern Vienna」と派手派手しく看板が掲げられております。フンデルトヴァッサーの聖地はトイレまで観光地なのである。もちろん外国らしく入場は有料。0.60ユーロ必要なので小銭のご用意を。

地下へ続く階段を降りるとここがトイレの入口になっておりました。ちょっとしたアトラクションだなこのノリは。自動ゲートが据え付けられているので、ちゃんとコインを入れて中へどうぞ。

たかがトイレに無駄なワクワク感を感じさせるのは芸術の都ウィーンならではの粋な計らいなのでしょうか。ここ以外にもウィーン市内には芸術的トイレがいくつかあるらしい。オペラ音楽がずっと掛かってるオペラトイレとか。ウィーンには1泊2日しかしなかったから結局見れなかったけど。

さっすが、トイレの中もしっかりフンデルトヴァッサーだ…まあでも壁周りが面白いというだけで洗面台や便器なんかはフツーです。小便器の位置が高すぎて背の低い日本人だからと特に困るような事もありません。

肝心の個室はこの通り。まあ海外のトイレなんで設備的にはあまり期待しないでおきましょう。個室の壁には「Next Pi-Pi-Point」だなんて書かれていて別の場所にある「オペラトイレ」の案内もされている。系列店なのかしらね。

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DEEP案内シリーズ管理人。2009年から海外各地を訪問し始め、現在の訪問国は25ヶ国。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。