日本人の墓石が石垣や階段にされてしまった釜山の観光スラム街「峨嵋碑石文化村」を歩く (全2ページ)

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韓国 釜山 峨嵋洞

そんな超狭い階段だらけの路地を進むとそこに現れたのは、何やら色んな石が組み込まれた不自然な形の土台。ご丁寧にその上に墓場のような絵まで描かれている。これが「碑石村」の所以か…

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一目見ればすぐ分かる。これらは全て朝鮮戦争当時の避難民によって石垣にされてしまった日本時代の墓石である。どこぞの家の家紋やら「●●家霊標」と日本語で書かれているものがそのまま使われている。生々しい…

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「●●日没」と書かれた石も、どう見ても墓石です本当にありがとうございました。

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そんな墓石もアートの材料に活用されちゃっているこの大胆さは日本では決してお目にかかる事ができない。1945年、敗戦で日本人は朝鮮半島から追い出され、それから70年経ちましたが、この墓の所持者の子孫は現在どこに居るのか、それすら分からないようだ。

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日本人の墓は石垣ばかりではない、階段にされている例も見られる。朝鮮戦争の最中、北朝鮮軍に追われ釜山までやってきた避難民が、日本人の共同墓地だったこの土地に村を作った。まともな建築資材も無い状態で、手近な資材に墓石があったので、やむなく使った。そういう話なのだ。

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しかしそんな墓石の土台もこのように遠巻きに見るとアート作品と一体化しちゃっているので尚更奇妙に映る。隣にある甘川文化村の成功を目にして、峨嵋洞も同じような観光地にしてしまおうという動きがあるようで、路地の絵画の多くも最近加えられたもののようだ。

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墓石の土台の上には、何故か韓国警察のマークがついた真新しい小屋が置かれている。そこには「幸せ村安心カフェ」(행복마을안심카페)と書かれている。あっちこっち警察が置いた物だらけですね…もっともカフェらしき店は営業している様子がない。

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安心カフェの小屋の脇から路地を抜けた向こうにあずまやが建っていて、ここで観光客に一息ついてもらおうという設計だろうか、まだまだ作りかけな感じがしますけども、やたらと警察の制服を着たマスコットキャラクターがいる件。日本で言うピーポくん的な奴でしょうか、こちらは韓国警察の「ポドリ君」のようです。

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観光客を呼び込む為に整備してあるとはいえ、やたら狭い路地に密集する家々にはちゃんと住民の生活があり、案の定高齢者率が高い為か見かけるのは随分なご老人ばかりなのだが、そんな住民が家の前で普通に掃除している横を通り抜ける事になる。

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あと妙に公衆トイレが多いのは、別に観光客向けではなく住民向けのもので、未だにトイレが完備されていない民家も多いのだ。甘川文化村の観光地化の成功に勢いづいて峨嵋洞も変わろうとしているようだが、当の住民にとっては生活環境が劇的に改善されるわけでもないし、立場的には微妙そうだ…

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トイレが無く未だに共同便所を使っている世帯も多いらしいが、ガスは一部プロパンが置かれている世帯もあるようだ。しかしそれすらなく、仕方なく練炭を使い続けている世帯も一部には存在する。インフラの整備状況は日本の貧民街のそれよりも劣っている。

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ガスや下水道のインフラは中途半端なままだが、一方では高齢化する住民の健康維持を目的にお役所が設置したと思われる奇妙なトレーニングマシーンのようなブツがあちらこちらに据え付けられていたりするものの、誰も使っている様子がない間抜けな光景が見られる。お役所仕事がテキトーなのは日本も韓国も変わりませんね。

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さらにもうひとつ日本時代の残滓とも呼べる古い石垣が残されているのが見られた。整然と土台の石が積まれている特徴から見ると、恐らく日本統治時代に築かれたものであろう。

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日本人墓地はこのように墓石の周りに2~3メートル四方の囲いがしてあるものが多く、その囲いを柱にして屋根を張るとすぐに小さな家が出来たとか…まさにこの状況の家屋だよな…既に廃屋と化し、外壁もボロボロに崩れている。

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その廃屋の傍らには「●遍 大正二年八月十二日 山中利●」と読める墓石が無造作に置かれていた。もう大方100年前の墓石である。持ち主もわからんだろうな…

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かつてのスラムを「文化村」に作り変える動きは、こうした真新しく整備された映画のフィルムを意識した野外写真ギャラリーの存在からも見て取れる。「大韓民国第1世代ドキュメンタリー写真家」というチェ・ミンシク氏が撮影した、昔のスラム街の住民の写真が展示されていた。

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セルカ棒(自撮り棒)片手にリア充カップルやら観光客でごった返す隣の甘川文化村からは徒歩でも来られる範囲にあるはずの峨嵋洞文化村…アートで町おこしを図る行政の思惑とは裏腹に、訪れる観光客もまばら。むしろ逆に居心地いいので、全然構わないんですけどね。

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で、峨嵋洞の一番てっぺんまで登ってみると、そこには釜山市街を一望できる展望台と変なキャラクターのオブジェがいくつも置かれた場所があって、何のキャラやねんこれ…というのはさておき…

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ここからの釜山市街の眺望はなかなか素晴らしいものがある。遠目に見ると釜山タワーやその向こうの影島まで眺められるので、日が暮れたら夜景が素敵そうですね。まあ、夜に駅からここまで来るのに治安が気掛かりですが…ちなみに峠の反対側にある有名な甘川文化村ではこの景色は望めない。

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そして眼下に広がる峨嵋洞のごちゃごちゃした街並み。日本家屋とは違って、色遣いの派手さと無骨なコンクリート建築ばかりの家並みが崖にへばりつく風景は、長崎あたりで眺めるそれとは全然違っている。やはり日本から近いとは言え、ここは外国なのである。


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DEEP案内シリーズ管理人。2009年から海外各地を訪問し始め、現在の訪問国は25ヶ国。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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